「沈黙の臓器」腎臓を守り、健やかなセカンドライフを!
私たちの体内で24時間365日、休むことなく働き続けている「腎臓」。左右の腰のあたりに一つずつあり、血液をろ過して老廃物を尿として排出したり、血圧を調整したり、骨を丈夫にしたりと、健康維持に欠かせない重要な臓器です。
しかし、腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、機能が落ちてもギリギリまで自覚症状が出ません。シニア世代にとって腎臓の健康を保つことは、全身の血管を守り、元気に長生きするための大きな鍵となります。
今回の記事では、近年よく耳にする「CKD(慢性腎臓病)」について、腎不全との違いのほか、その特徴や予防法を分かりやすく解説します。

「CKD」と「腎不全」の違いとは?
「CKD」と「腎不全」は別々の病気ではなく、病気の進行の度合い(ステージ)を表す地続きの関係にあります。
CKD(慢性腎臓病)とは?
腎臓の働き(ろ過能力)が健康な人の60%未満に低下している、または尿タンパクなどの異常が出ている状態が「3ヶ月以上続く」病気全般を指します。現在、日本の成人の約8人に1人(約1,330万人)がCKDと言われており、まさに「新たな国民病」となっています。
腎不全とは?
CKDが長年かけて進行し、腎臓の働きが正常の30%未満にまで落ち込んでしまった状態です。さらに機能が15%未満(末期腎不全)になると、自力で体内の毒素を排出できなくなり、命をつなぐために人工透析や腎移植が必要になります。

つまり、CKDが悪化した「最終段階」が腎不全なのです。
シニア世代が特に気をつけたい3つの理由
シニア世代の腎臓病には、若い頃とは違う大きな特徴とリスクがあります。
加齢による自然な衰え
特別な病気がなくても、70代になると腎臓のろ過能力はピーク時の60〜70%程度にまで低下していることが珍しくありません。そのため、少し負担がかかっただけでもCKDに進行しやすい土台があります。
最大の原因は「生活習慣病」
腎臓は細い血管の塊のような臓器です。そのため、高血圧や糖尿病(高血糖)が続くと血管がボロボロになり、真っ先にダメージを受けてしまいます。現在、透析が必要になる原因の第1位は「糖尿病性腎症」です。
命に関わる「心筋梗塞・脳卒中」の引き金に
多くの方が「腎臓病=透析」と考えがちですが、実はもっと怖いリスクがあります。腎臓が悪くなると全身の血管の老化が進み、透析になる前に「心筋梗塞」や「脳卒中」といった命に関わる病気を発症するリスクが数倍に跳ね上がるのです。

つまり腎臓を守ることは、全身の血管を守ることに直結しますね。
見逃してはいけないサインと「健康診断」の重要性
CKDの厄介な点は、初期には「自覚症状がほとんどない」ことです。病気がかなり進行して初めて、次のような症状が現れ始めます。
- 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
- 手足や顔がむくむ、疲れやすい、だるい
- 階段で息切れがする(貧血)
これらの症状が出たときには、すでに腎不全の一歩手前まで来ている可能性があります。だからこそ、症状が出る前に「健康診断の数値」で確認することが絶対に必要です。
毎年必ずチェックしていただきたいのが、血液検査の「eGFR(推算糸球体ろ過量)」と、尿検査の「尿蛋白」です。eGFRが「60未満」、または尿蛋白が「+」以上になっていたら、迷わずかかりつけ医や腎臓内科を受診してください。
今日からできる!「腎臓を守る5つの習慣」
一度失われた腎臓の細胞は、元に戻すことがほぼできません。しかし、生活習慣を見直せば、進行を大幅に遅らせることができます。
- なによりも「減塩」 塩分の摂りすぎは血圧を上げ、腎臓に過度な負担をかけます。1日6グラム未満が目標です。お味噌汁は1日1杯にして汁を残す、お醤油は「かける」のではなく「小皿に出してつける」など、酸味や香辛料を活用して薄味に慣れましょう。
- こまめな「水分補給」シニア世代は喉の渇きを感じにくく、「隠れ脱水」になりがちです。脱水は腎臓への血流を減らし、機能を一気に悪化させます。1日1.5〜2リットルを目安にこまめに水分を摂りましょう。

むくみがひどい場合など、医師から水分制限の指示がある方は必ず従ってください。
- 市販の「痛み止め」に注意 腰痛や膝痛などで、市販の解熱鎮痛剤(NSAIDsと呼ばれるロキソニンなど)を頻繁に飲む方は要注意です。これらの薬は腎臓の血管を縮め、機能低下を引き起こします。痛みが続く場合は自己判断で飲み続けず、医師に相談しましょう。
- 血圧と血糖値の徹底管理 すでに高血圧や糖尿病のお薬を飲んでいる方は、勝手にやめず、きちんと飲み続けることが最大の予防です。
- 適度な運動 ウォーキングなどの有酸素運動は、血圧や血糖値を下げ、肥満解消につながります。無理のない範囲で体を動かしましょう。
もし「腎臓病」と診断されたら?
もしCKDと診断されても、悲観することはありません。最近は医療が大きく進歩しています。
画期的な新しい薬の登場
近年、「SGLT2阻害薬」という元々は糖尿病のために開発されたお薬が、腎臓を守るのに非常に高い効果があることが証明されました。糖尿病ではないCKDの患者さんにも保険適用となり、新たな治療の柱として急速に普及しています。

進行度に合わせた食事療法
腎機能が落ちてくると、減塩に加えてお肉やお魚などの「たんぱく質」や、生野菜などに多い「カリウム」の制限が必要になります。たんぱく質は体内で老廃物(ゴミ)になるため、制限して腎臓のお掃除の負担を減らすのです。

ただし、シニア世代は過度な食事制限による低栄養にも注意が必要なため、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行ってください。
※ この記事の内容を分かりやすくまとめた動画もご用意しました。あわせてご覧ください。

おわりに
腎臓病は、早く気づいて正しくケアをすれば、一生自分の腎臓と付き合っていくことができる病気です。充実したセカンドライフの土台となる健康な身体を維持するために、まずはご自身の「腎臓の数字(eGFRと尿蛋白)」を知ることから始めてみませんか?
慢性腎臓病(CKD)は日本人成人の約5人に1人が罹患しているとされる身近な病気であり、初期段階では症状がほとんど現れないため、腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。しかし、早期発見と適切な治療により進行を大幅に遅らせることができるでしょう。
血液検査を毎年広範囲に受けているという習慣は、腎臓病の早期発見において最も有効です。「eGFR」と「尿蛋白」の数値を毎年確認し、少しでも変化があれば腎臓内科への迷わず相談しましょう。
あなたの「沈黙の臓器」が発する小さなサインを、ぜひ見逃さないであげてください。
《 参考情報 》


