9月に入り、秋雨前線や台風の影響で、雨や曇りの日が続いていますね。「最近なんだか体が重だるい」「朝起きても疲れが取れない」「ひざや腰の関節が痛む」と感じていませんか?
実は今、こうした長雨による心身の不調を訴えるシニア世代が増えています。この症状は「多雨疲労(たうひろう)」と呼ばれ、例年の約2倍の患者数が報告されるほど、身近な問題になっています。


「歳のせいかしら…」「気のせいかも」と我慢せず、まずは原因を知り、適切にケアしていきましょう。
今回は、シニア世代の皆様に向けて、多雨疲労の正体と、今日からできる簡単な対策法を分かりやすく解説します。

「多雨疲労」とは? 一般的な秋バテとの違い
医学的な正式病名ではないけれど…
「多雨疲労」は医学的な正式病名ではありませんが、雨や曇天が長引くことで起こる体調不良の総称です。長雨による「気圧・湿度・気温」の急激な変化に自律神経がついていけなくなる「気象病」の一種とされています。
夏場から秋口の気温差で起こる一般的な「秋バテ」と重なる点もありますが、多雨疲労の大きな特徴は、「連続する低気圧」「高湿度」「極端な日照不足」という長雨特有の要因が重なりやすいことです。
シニア世代に現れやすい主な症状
多雨疲労の不調は、全身にさまざまな形で現れます。
- 身体のだるさ・重さ:朝から全身が重く、下肢が鉛のように感じる
- 頭痛・めまい・ふらつき:雨の日に頭が重くなり、ふわふわ浮くような感覚がある
- 関節痛・神経痛:ひざや腰の持病の痛みが強まる
- 胃腸の不調・食欲低下:胃がもたれたり、お腹が張ったりして下痢をしやすくなる
- 気分の落ち込み・不眠:やる気が出ず、夜中に目が覚めてしまう
特にシニア世代は、加齢に伴い自律神経の調整機能や筋肉量が低下しやすく、若い世代よりも症状が重くなったり、長引いたりする傾向があります。
なぜ長雨で体が疲れるの? 4つの主な原因
長雨が体に負担をかける背景には、主に4つの要因があります。
気圧の低下で自律神経が乱れる
雨をもたらす低気圧が続くと、耳の奥にある「内耳(ないじ)」のセンサーが気圧の変化を察知します。これが脳にストレス信号として伝わり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、頭痛やめまいを引き起こします。
高湿度と寒暖差で体温調整がうまくできない
湿度が80%を超えるような環境では汗が蒸発しにくくなり、体熱や水分をうまく外へ逃がせません。東洋医学ではこれを「湿邪(しつじゃ)」と呼び、体内に余分な水分が溜まることで「むくみ」や「だるさ」につながります。また、雨による急な冷え込みと、晴れ間の暑さの激しい寒暖差も、自律神経を疲弊させます。
日照不足で「幸福ホルモン」が減る
雨の日が続くと日光を浴びる時間が激減します。日光不足になると、脳内で精神の安定や覚醒を保つ「セロトニン」の合成が低下し、気分が塞ぎ込みがちになります。さらに、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌リズムも乱れ、夜の睡眠が浅くなってしまいます。
外出控えによる運動不足の悪循環
「雨だから」と家に閉じこもりがちになると歩行量が減り、血流が悪化します。特に「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を使わないと、下半身に水分や血液が滞り、だるさや筋力低下(フレイル)を加速させてしまいます。
スッキリ乗り切る予防&セルフケア
多雨疲労を防ぎ、症状を和らげるには、「温める・動かす・光を浴びる」の3つを意識するのが効果的です。無理のない範囲で、毎日の生活に少しずつ取り入れてみましょう。
① 1分でできる「耳くるくるマッサージ」
耳の周りには自律神経を整えるポイントが集まっています。気圧変化によるめまいや頭痛を感じたときにおすすめです。1日2セットを目安に行い、強く引っ張りすぎないようにしましょう。
- 耳たぶを軽くつまみ、前から後ろへ優しく10回回します。
- つぎに後ろから前へ10回回します。
- 耳を上・横・下に軽く引っ張ります。
② 室内でできる「足の筋ポンプ運動」
- かかとの上げ下げ:椅子や壁に手を添えて立ち、かかとをゆっくり上げて下ろす動作を15〜20回行います。ふくらはぎの血流が改善し、むくみの解消につながります。
- その場足踏み:テレビを見ながらでも、5〜10分程度、大きく足を上げて足踏みをします。
- 足の付け根ストレッチ:足を一歩踏み出して腰を落とすストレッチを10回ほど行います。
③ 「朝の光」と「温活」で体内時計をリセット
- 朝起きたらカーテンを開ける:曇りや雨の日でも、室内の照明より外の光の方が高い照度を持っています。窓際に立って光を浴びることで脳が覚醒し、セロトニンが作られます。
- ぬるめのお湯で入浴:38〜40度のお湯に10〜15分ほどゆったり浸かりましょう。適度な水圧で血液循環が良くなり、副交感神経が優位になってぐっすり眠れます。
- 首と足首を温める:冷え込みに備えて、レッグウォーマーや薄手の上着を着用し、自律神経の通り道である首や冷えやすい足首をガードします。
④ 胃腸を温め「余分な水分」を出す食事
- 水分代謝を助ける食材:黒豆、小豆、はと麦、かぼちゃ、キノコ類、生姜、長ねぎなど
- 腸内環境を整える食材:納豆や味噌などの発酵食品、海藻類など
- バランスの良い栄養:たんぱく質(魚・肉・卵・豆腐)と野菜をしっかり摂り、こまめな水分補給も忘れずに行いましょう。なお、冷水は控えましょう。

エアコンの除湿機能や除湿機を活用し、室温25〜27℃、湿度50〜60%を保つと快適に過ごせます。
漢方薬の活用と「病院を受診すべき危険なサイン」
つらい症状には、漢方薬という選択肢も
体内の水分バランス(水滞)を整えたり、胃腸の働きを助けたりする漢方薬は、多雨疲労の症状緩和に役立つことがあります。
- 五苓散(ごれいさん):体内の水分代謝を整え、頭痛・めまい・むくみを和らげる代表的な漢方です。
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):めまいや立ちくらみ、動悸に用いられます。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):胃腸の働きを助け、全身のだるさや気力低下の改善を目指します。

漢方薬を服用する際は、自己判断せず、必ずかかりつけ医や薬剤師にご相談ください。
「単なる雨のせい」と決めつけないで! 受診の目安
シニア世代で特に注意したいのは、「雨のせいだから仕方ない」と放置して、隠れた病気を見逃してしまうことです。以下の症状がある場合は、我慢せず、早めに医療機関(内科や耳鼻科等)を受診してください。
- 雨の日に関係なく普段の頭痛薬が全く効かない
- 急激に足のむくみが悪化し、指で押すと痕が戻らない
- 少し動いただけで激しい動悸や息切れがする、横になると息苦しい
- 手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、突然の激しい頭痛がある
- 食欲不振や気分の落ち込みが2週間以上続き、体重が減っている
また、めまいやふらつきは転倒や骨折につながるため、手すりを利用するなど、室内での移動にも十分注意してください。
おわりに
長雨による「多雨疲労」は、気圧・気温・湿度の変化、自律神経への負担、日照不足、運動不足、睡眠リズムの乱れなどが重なって起こる「気象変化による心身の不調」と考えると分かりやすいでしょう。
多雨疲労は、あなたの「気のせい」でも「怠け」でもありません。天候の変化に、体が正直に反応しているサインです。
「我慢する」のではなく、「朝の光を浴びる」「耳や足を少し動かす」「体を温める」といった日々の小さな工夫で、自律神経を整えていきましょう。毎朝「今日の体調は何点かな?」と記録して、ご自身の傾向を把握するのもおすすめです。
長雨の季節もやがて過ぎ、心地よい秋晴れの日がやってきます。無理をせず、ご自身のペースで、この季節を元気に乗り切っていきましょう。
《 参考情報 》



