健康生活ガイド(非結核性抗酸菌症編)

Uncategorized

シニアに急増する「NTM症」と上手に向き合う方法

「風邪でもないのに咳や痰が続く」「最近、むせやすくなった」――そんなことはありませんか?

「年齢のせい」と見過ごしがちですが、咳が長引く場合は、シニア世代で増えている「非結核性抗酸菌症(ひけっかくせいこうさんきんしょう、以下NTM症)」という呼吸器の病気のサインかもしれません。

非結核性抗酸菌症(NTM症)
非結核性抗酸菌症(NTM症) について紹介しています

近年、日本の罹患率は2007年比で約2.6倍に増加し、2021年には死亡数が結核を上回るなど、結核よりも身近な病気になりつつあります。

この記事では、NTM症の原因・症状・予防・治療などについて、分かりやすく解説します。

そもそも「NTM症」とは?結核との違い

NTM症は、結核菌以外の「非結核性抗酸菌(NTM)」が肺などに感染し、長期間にわたって炎症を起こす病気です。

「結核」と名前は似ていますが、決定的に異なるのは「人から人へは感染しない(うつらない)」点です。そのため、周囲にうつす心配はなく、隔離や生活制限も不要です。また、病原性が比較的弱く、進行が数年〜10年以上と非常にゆっくりなのも特徴です。

なぜ今、シニア世代に増えているの?

急増の背景には、高齢化に伴う免疫力の低下やCT検査の普及があります。新たに診断される方の約70%は女性(平均年齢69.3歳)で、特に「やせ型の中高年女性」に多い傾向があります。

女性ホルモンの変化や体質などが関係していると考えられていますが、詳しい理由はまだ解明されていません。

菌はどこにいる?日常生活に潜む「感染源」

原因となる菌(NTM)は、水や土壌など身近な環境に広く存在する常在菌で、200種類以上が知られています。全体の約8〜9割は「MAC(マック)菌」が占め、これによる病気は「肺MAC症」と呼ばれます。

非結核性抗酸菌症(マック症)とはどんな病気? |よくあるご質問|ましもと内科呼吸器科
非結核性抗酸菌症(マック症)とはどんな病気? のページ

主な感染経路は、土ぼこりや水しぶきを吸い込むことです。特に次のような場所は、菌が増えやすい「温床」になりやすいとされています。

  • お風呂場: シャワーヘッド内部や追い焚き配管、ぬめりのある排水口など。水しぶき(湯気)を吸い込みやすい環境です。
  • 庭の土: ガーデニングなどで乾いた土を扱うと、舞い上がった土ぼこりと一緒に吸い込みやすくなります。
  • 加湿器: 加湿器(特に超音波式)の汚れた水の中で菌が増え、霧に乗って室内に漂います。

健康な人は吸い込んでもほとんど発症しませんが、免疫力の低下や肺の傷みがある場合は、発症リスクが高まりますね。

この症状、年のせい?見逃せないサイン

NTM症は進行が緩やかなため、初期は約3〜4割が「無症状」で、健診のレントゲンなどで偶然見つかるケースが多いです。ただし、病状が進むと次のような症状が現れます。

  • 長引く咳や痰: 3週間以上続く咳や痰は、代表的なサインです。
  • 血痰(けったん): 痰に血が混じることがあり、この病気に特徴的な症状です。
  • だるさ、微熱、体重減少: 疲れやすさ、微熱、夜間の寝汗、理由のない体重減少などが現れます。

「年のせい」と思って放置せず、気になる症状が3週間〜1か月以上続く場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

診断と治療の進め方:焦らず「長期戦」で向き合う

診断は、胸部CT検査で特徴的な影を確認し、痰の培養検査で同じ菌が2回以上検出されることで確定します。培養には約6週間かかります。なお、診断された方が全員すぐに薬を飲み始めるわけではありません。

経過観察

症状が軽く進行が遅い場合や、高齢で副作用のリスクが高い場合は、すぐに薬を使わず、定期検査で様子を見る「経過観察」とすることがよくあります。

基本となる「多剤併用療法」

治療が必要な場合は、複数の薬を組み合わせる「多剤併用(たざいへいよう)療法」を行います。NTMは薬への耐性ができやすいため、マクロライド系抗菌薬「クラリスロマイシン」と、抗結核薬の「リファンピシン」「エタンブトール」の3剤を毎日服用するのが基本です。

治療は、痰から菌が消えてからさらに1年間続け、全体で1年半〜2年程度の長期戦となります。自己判断で服薬を中断すると耐性菌を生むおそれがあるため、根気よく続けることが大切です。

 難治性への新しい選択肢

薬の効果が不十分な難治性の場合、近年承認された吸入薬「アリケイス」が用いられます。薬を霧状にして直接肺の奥へ届けるため、副作用を抑えつつ高い効果が期待できます。薬が効かない重症例では、肺を部分的に切り取る外科手術が検討されることもあります。

この病気は完治が難しく再発しやすいため、「治しきる」というより、高血圧のように「病気と上手に付き合い、進行を抑える」という意識が大切です。

今日からできる!感染リスクを下げる4つの工夫

日常生活のちょっとした工夫で、吸い込む菌の量を減らせます。

  1. お風呂場の換気と清掃: 入浴後は換気で浴室をしっかり乾かし、シャワーヘッドや追い焚き配管は定期的に清掃しましょう。
  2. ガーデニング時のマスク: 土いじりの際は「不織布マスク」を着用し、あらかじめ土に水をスプレーして土ぼこりを抑えます。作業後は、うがい・手洗いを徹底しましょう。
  3. 加湿器の清潔管理: 加湿器の水は毎日交換し、本体もこまめに洗浄して、菌の繁殖を防ぎます。
  4. 体力と免疫力の維持: 禁煙はもちろん、適度な運動に加え、体重減少を防ぐための十分な栄養摂取(タンパク質など)を心掛けましょう。

おわりに

NTM症は、高齢化とともに静かに増加しており、日本人にとって今や結核より身近な呼吸器感染症です。長引く咳や痰、血痰、原因不明の体重減少がある場合は、「年のせい」と決めつけず、呼吸器内科を受診し、胸部CTや喀痰検査を受けることをおすすめします。

まずは、次のポイントを押さえて、趣味も暮らしも安心して楽しみましょう。

  • 人にはうつらないため、家族との生活を過度に心配しない。
  • 咳や痰が長引く・体重が減るなどのサインがあれば、早めに呼吸器内科を受診する。
  • 治療は経過観察になることもあり、「1年半以上の長期戦」になる場合があることを理解して向き合う。
  • 浴室の衛生管理やガーデニング時のマスクで、日常の吸入リスクを減らす。

お庭で大好きな花を育て、お風呂を楽しむ——そうした豊かな日常を諦める必要はありません。マスクや換気といった小さな「自衛のコツ」を暮らしに取り入れ、これからも毎日を思いきり楽しんでいきましょう!

《 参考情報 》

NTM症の謎:静かな急増と自分を守る方法
近年の日本では、結核菌以外の菌が肺で炎症を引き起こす非結核性抗酸菌症(NTM症)が、シニア世代を中心に急増しています。この病気は人から人へ感染しないのが特徴ですが、進行が遅く、完治が難しいため、数年単位での長期的な治療や経過観察が必要となり...
非結核性抗酸菌症 (ひけっかくせいこうさんきんしょう)とは | 済生会
非結核性抗酸菌症の原因や症状、治療法について解説。非結核性抗酸菌症は、非結核性抗酸菌という細菌によって起こる感染症です。「抗酸菌」というのは、細菌を色素で染めたときに、酸で脱色されない性質を持つ菌のことです。その中でも、結核菌やらい菌(ハン...
非結核性抗酸菌症(NTM感染症) - 基礎知識(症状・原因・治療など)
【医師監修・作成】「非結核性抗酸菌症(NTM感染症)」結核菌以外の抗酸菌による感染症。ほとんどが肺への感染|非結核性抗酸菌症(NTM感染症)の症状・原因・治療などについての基礎情報を掲載しています。

 

タイトルとURLをコピーしました