香りの女王に癒されて
前回は第1回として、室内植物「胡蝶蘭カララ」をご紹介しました。今回は第2回として、室内で育てている2種類のジャスミンをご紹介します。

初夏から夏にかけて、庭先やベランダから甘く爽やかな香りが風に乗って漂ってくる季節です。花の美しさはもちろん、その優雅な香りから「香りの女王」とも称されるジャスミン。日々の暮らしの中で、ふとした瞬間に花の香りに包まれると、心がすっと軽くなるのを感じる方も多いのではないでしょうか。
ご自宅で「マダガスカルジャスミン」や「シルクジャスミン」を育てていらっしゃる方も多いと思います。緑の葉が生き生きと茂り、可憐な花を咲かせる姿は、毎日の水やりやお手入れの時間をいっそう豊かなものにしてくれます。
本記事では、これら2つの植物の魅力や育て方のコツを、少し意外な事実も交えながら分かりやすくご紹介します。これからの園芸ライフがさらに楽しくなるヒントになれば幸いです。

実は「本当のジャスミン」ではない?驚きの事実
まず初めに、少し驚かれるかもしれないお話をします。
園芸店へ行くと、「〇〇ジャスミン」という名前の植物をたくさん見かけますよね。よく知られているものには、春に強い甘い香りを放つ「ハゴロモジャスミン」や、ジャスミンティーの香り付けに使われる「マツリカ(アラビアジャスミン)」などがあります。

これらは植物学上、モクセイ科に属する「本当のジャスミン」です。自宅の庭では、ハゴロモジャスミンを古くから育てていますね。
ところが、皆様が大切に育てていらっしゃる「マダガスカルジャスミン」と「シルクジャスミン」は、実はモクセイ科ではなく、まったく別のグループの植物なのです。
マダガスカルジャスミンは「キョウチクトウ科」、シルクジャスミンは「ミカン科」の仲間にあたります。「えっ、ジャスミンじゃないの?」と驚かれるかもしれませんが、どちらも本家のジャスミンに負けない甘く清々しい香りを持つことから、親しみを込めてこの名が付けられました。

ルーツは違っても香りで私たちを楽しませてくれる植物の世界は奥深く、本当に面白いですね。
純白の気品「マダガスカルジャスミン」
ここからは、それぞれの個性と育て方のポイントを見ていきましょう。まずは、マダガスカルジャスミンです。

【魅力】
最大の魅力は、陶器のように肉厚で星形をした、純白の花です。清楚で気品のある美しさと、甘すぎない上品な香りから、ウエディングブーケにもよく使われます。花言葉は「愛される花嫁」「清らかな祈り」などで、とても素敵な意味が込められています。

濃い緑色の葉は一年中つややかで、お部屋に置くとぱっと明るい雰囲気に。さらに、「金運を呼ぶ」という風水効果があるとも言われています。
【育て方のコツ】
日当たりを好みますが、真夏の強い直射日光は「葉焼け」の原因になります。春と秋はよく日が当たる場所で、真夏はレースカーテン越しなどの明るい半日陰に置いてあげましょう。また寒さにとても弱いため、最低気温が10℃を下回る頃には、暖かい室内へ移動させてください。
水やりは、春〜秋の生育期は土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出るくらいたっぷりと。冬は生育が緩やかになるので、土がしっかり乾いてから数日後に与える程度に控えめにすると、根腐れを防げます。

剪定は新しい枝に花を咲かせる性質があるため、春先に枝先を軽く切っておくと枝数が増え、花も咲きやすくなりますね。

※ ひとつだけご注意いただきたいのが、茎を切ったときに出る白い樹液です。毒性(アルカロイド)を含み、素手で触れるとかぶれることがあります。剪定の際は手袋を着用し、お孫さんやペットが誤って口にしないようお気をつけくださいね。
柑橘香るさわやかな「シルクジャスミン」
続いて、シルクジャスミンです。和名では「月橘(ゲッキツ)」とも呼ばれます。

【魅力】
ミカン科の植物であるシルクジャスミンは、初夏から夏にかけて小さな白い花をたくさん咲かせます。香りは、ジャスミンの甘さに柑橘系の爽やかさが混ざったような、心地よいものです。
また、花後には緑色の小さな実をつけ、秋には真っ赤に色づきます。花・香り・赤い実・つややかな葉と、四季を通じて多彩な表情を見せてくれるのが魅力です。幹が硬く締まりやすいため、盆栽のように仕立てて楽しまれる方もいらっしゃいます。
【育て方のコツ】
日光が大好きなので、一年を通してできるだけ日当たりの良い場所で育てましょう。日照不足になると、花つきが悪くなったり葉が落ちてしまったりします。
水やりは、土が乾いたらたっぷり与えます。ただし、鉢底に水を溜めたままにしないことが大切です。
ミカン科の植物は乾燥すると「ハダニ」という小さな虫がつきやすくなります。予防として、霧吹きで葉に水をかける「葉水(はみず)」をすると、葉のツヤも良くなり一石二鳥ですね。

枝葉が茂って風通しが悪くなると虫がつきやすくなるため、春〜夏の生育期に混み合った枝を思い切ってカットしましょう。切った枝は挿し木で増やすこともできます。

冬はマダガスカルジャスミンよりは少し耐えますが、それでも5℃以上の場所が必要です。冷え込む時期は、室内の明るい窓辺などに取り込んであげてください。
植物が教えてくれる、穏やかな心のリズム
シニア世代の皆様にジャスミン(と名のつく植物たち)を特におすすめしたいのは、ただ美しいだけでなく、「季節の移ろい」や「日々の穏やかなリズム」を自然に感じさせてくれるからです。
朝早く起きて水やりをしながら小さな新芽を見つけたり、夕暮れ時に風に乗ってふわりと漂う上品な香りに癒されたり。そんなささやかなひとときが、心にそっと安らぎをもたらしてくれます。

派手さを競うお花ではありませんが、お庭やベランダ、リビングの窓辺に静かに寄り添い、毎日を少しだけ豊かに彩ってくれる存在ですね。
同じ「ジャスミン」という名前で結ばれながら、まったく違う個性を持つ二つの植物。片方は、あんどん仕立てなどでつる性として華やかに。もう片方は、常緑の木としてしっとりと赤い実をつけます。この二つを一緒に育てることで、一年を通して「香りのリレー」を楽しめます。
おわりに
植物は季節ごとの変化を通して、私たちに小さな感動を与えてくれます。ご自宅で育てているマダガスカルジャスミンとシルクジャスミンも、年月を重ねるほど株が充実し、より美しい花と香りで暮らしを豊かに彩ってくれることでしょう。

どちらも「日当たり」「冬の防寒(5℃以上)」「水はけの良い用土」という基本は共通していますね。
マダガスカルジャスミンは「新しい枝に花芽が付く」性質を意識して剪定すること、シルクジャスミンは「葉水によるハダニ予防」を心がけることが、それぞれの育成のコツです。
名前の由来となった芳香を存分に楽しみながら、この夏も2つの個性的な「ジャスミン」を育て続けてほしいと思います。大切に育てながら、それぞれの個性をじっくり味わい、心豊かなボタニカルライフ(植物のある暮らし)をぜひお楽しみください。
《 参考情報 》





