資金運用(25’投資戦略後期編)

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2025年前期の株式市場は、トランプ政権の新関税政策の不透明さにより、日米市場が大きく変動しました。当初、日本への関税率は25%になるとの懸念がありましたが、外交交渉の結果15%に引き下げられ、8月7日米東部時間0時(日本時間同日午後1時過ぎ)から発動しています。

自動車産業への25%追加関税については現在も交渉が継続中で、最終的に従来税率と合わせて15%程度になる見通しです。ただし、実施時期や条件が未確定なため、自動車関連株には不安定要素が残っています。

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最近になり、トランプ関税の枠組みと実施時期についての見通しが立ち、市場に安心感が広がっています。この不確実性の一部解消により、日米株式市場は上昇傾向を示し始めました。さらに、FRBの利下げ期待も市場心理を好転させており、金融緩和が本格化すれば、日米株式市場の活性化と新たな投資機会の拡大が期待できます。

本記事では、これらの市場環境を踏まえ、シニア世代向けの2025年後期の投資戦略を検討します。シニア特有のライフステージやリスク許容度を考慮しながら、現在の市場環境での留意点、長期的な資産形成と保全のバランス、年金を補完する投資収益の確保、そしてインフレ対策について具体的に考察します。

市場環境とシニア世代が留意すべきポイント

2025年後期の投資環境は、2024年からの世界的なインフレと金利の動向、地政学的リスクなどが複雑に絡み合い、高い変動性が続くものと予想されます。

金融緩和の動向

世界の中央銀行が利上げから利下げへと政策転換を進める可能性があります。金利低下は債券価格の上昇を促し、株式市場にもプラスの影響が期待できますが、そのペースや幅によっては市場混乱を招くリスクもあります。

地政学的リスク

ロシアとウクライナの紛争の行方が懸念されます。米国の仲裁による停戦合意がカギとなりますが、世界各地では依然として地政学的緊張が続いています。これらは市場に予期せぬ変動をもたらす要因となります。

円安の継続リスク

円安傾向が続く可能性があります。住宅金利にも影響する日銀の利上げ判断の時期が重要です。円安は海外資産投資では為替差益をもたらす一方、国内の生活費上昇につながるため、リスクと機会の両面から検討する必要があります。

シニア世代は、こうした市場変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産を守りながら増やす戦略が特に重要ですね。

シニア世代の投資戦略の3つの視点

シニア世代の投資は現役世代と異なる目標を持つべきです。それは「守りながら増やす」「インフレに負けない」「安定したキャッシュフローの確保」の3つです。

資産を守りながら増やす「守りの投資」

最優先すべきは、大切な老後資金を減らさないことです。現役世代のようにリスクの高い資産に全額を投じるのではなく、資産の大部分をリスクの低い安定的な運用に充てることが基本となります。

  • 債券の活用: 国債や社債は株式に比べて価格変動リスクが低く、安定した資産です。特に金利上昇局面で発行された債券は安定した利息収入が期待できます。2025年後半に利下げが進めば、債券価格の上昇も見込めるでしょう。
  • バランスファンドの活用: 株式と債券など複数の資産を組み合わせるバランスファンドは、一つの資産に集中するリスクを分散できます。専門家が運用するため、自分で細かい配分調整をする手間も省けます。
  • 現金・預金も大切な資産: すべての資産を投資に回すのではなく、当面の生活費や緊急時のために、十分な現金を確保しておくことが重要です。

インフレに負けない「インフレ対策投資」

物価上昇(インフレ)は現金の価値を目減りさせます。預金だけでは資産が実質的に減少してしまうため、インフレに強い資産を組み込むことが不可欠です。

  • 株式投資: 企業の株式はインフレ環境下でも事業収益を伸ばす能力があるため、インフレに強い資産といえます。特に生活必需品や安定した需要が見込める分野(食品、医薬品、インフラなど)の企業に投資することで、株主配当や優待を通じて物価上昇に対応できます。
  • 不動産投資信託(REIT): 不動産はインフレに強い資産です。REITなら少額から不動産に投資でき、個別の不動産購入よりも手軽にインフレ対策ができます。また、賃料収入という形で安定した分配金も期待できます。
  • 金(ゴールド): 金は「有事の金」と言われるように、経済混乱時やインフレ時に価値が上昇しやすい特性があります。ポートフォリオの一部に組み込むことで、効果的なリスク分散が期待できます。

安定した「キャッシュフロー確保」

年金収入だけでは不安な場合、投資からの安定した収入を確保することも重要な戦略です。

  • 高配当株への投資: 業績が安定しており、定期的に高い配当を出す企業の株式に投資します。配当金という形で定期的な現金収入を得られるため、生活費の足しにすることができます。
  • 分配型投資信託: 毎月や隔月など、定期的に分配金を受け取れるタイプの投資信託です。元本を切り崩してでも分配金を出すファンドもあるため、事前に運用方針をよく確認することが重要です。
  • 債券の利子収入: 債券に投資することで、定期的に利子を受け取ることができます。

シニア時代を安心して過ごすためには健康が最優先ですが、健康で豊かな生活を実現するには効果的な資金運用も不可欠ですね。

具体的な戦略の立て方と注意点

シニア世代の投資戦略においては、まず基本戦略を再確認し、上記の3つの視点を踏まえながら、以下のように戦略の見直しを行うことが重要です。

目標・リスク許容度・期間の明確化

まず基本として、資産運用では「目的・期間・リスク許容度」を明確に設定することが大切です。どれだけリスクを取れるか、資産をどの程度まで減らしたくないか、老後の期間はどれくらい続くかを踏まえて、投資配分を決めましょう。

特に、ご自身の年齢、健康状態、資産状況、そして家族構成などを考慮し、どれくらいのリスクを許容できるかを客観的に判断することが重要です。投資で失っても、生活に支障がない範囲で行うことを最優先にしましょう。

長期・積立・分散投資の徹底

  • 資産の分散: 株式、債券、不動産、金など、値動きの異なる複数の資産に分散して投資します。
  • 地域の分散: 日本国内だけでなく、米国、欧州、新興国など、世界中に分散して投資します。
  • 時間の分散: 一度に全額を投資するのではなく、定期的に一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」を活用すれば、高値掴みのリスクを軽減できます。

専門家アドバイスの効果的な活用

プライベートバンクやファイナンシャルプランナーなどの専門家は、あなたの状況に合った最適なポートフォリオを提案できます。特に人生の後半では資産計画が複雑になるため、専門家の適切なアドバイスを受けることで、より効率的で安心できる資産管理が可能になります。

家族・相続への配慮

資産運用方針を家族で共有し、認知症対策や相続対策に早めに準備しましょう。自身の心構えを確認し、資産承継、遺言や後見制度も必要に応じて検討します。

最後に

2025年後半においても市場の不確実性が高いため、シニア世代は「資産保全と安全性」を優先すべき時期です。変動リスクを抑えつつ長期的な資産価値を維持するために、インフレ対策として株式やREITなどをバランス良く組み入れながら、安定したキャッシュフローを確保する仕組みが、安心した老後生活の鍵となります。

70歳以上のシニアは資産増加だけでなく、健康状態やライフプランを踏まえ、築き上げた資産の保全と効果的な活用を考えることが重要です。投資に長けた方でも、その資産を自身や家族のために有効活用するには別のスキルが必要です。経済的に余裕のある方は、生活の質向上や次世代への計画的な資産移転を検討しましょう。

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シニア世代の理想的な資産運用戦略には、「安全性確保」「成長性維持」「税制優遇活用」「インフレ対応」「相続準備」「流動性確保」といった多角的視点が不可欠です。これらを総合的に考慮することで、強固かつ柔軟な資産管理が実現できます。

ご自身のライフスタイル、価値観、リスク許容度に合わせたポートフォリオを長期的視点で設計し、ポートフォリオバランスを適切に見直すことが2025年後期以降のシニア投資戦略の要ですね。

市場変動に一喜一憂せず、長期的な資産計画に基づいた冷静な判断を心がけましょう。

《 参考情報

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アライアンス・バーンスタインは、グロース株式、バリュー株式、ブレンド戦略、債券、オルタナティブ運用等、幅広い運用商品のご提供を通じてグローバルな資産運用業務を展開するアライアンス・バーンスタインの日本拠点です。
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