デジタル資産の時代における新しい選択肢
最近、テレビや新聞で「ビットコイン」や「暗号資産(仮想通貨)」という言葉を見聞きする機会が増えてきました。多くの方は、これらを「若い世代のギャンブル」「実体がなく怪しい」といったネガティブなイメージでとらえているかもしれません。
しかし今、日本の富裕層シニア世代の間で、ビットコインというデジタル資産に対する認識が大きく変わりつつあります。長年築いてきた資産をどう守り、次世代へ安全に引き継ぐか——この課題の重要性が増しているからです。
こうした時代の変化を踏まえ、前々回の記事では、インフレ長寿時代に備えた投資戦略を考察しました。

本記事では、インフレと長寿化が同時に進む現代社会において、シニア世代が知っておくべきビットコインの新しい位置づけと役割、そして安全に付き合うための具体的な方法をわかりやすく解説します。
資産価値の目減りリスク
日本は長年のデフレから脱却し、インフレ時代に入りました。日銀は年2%の物価上昇を目標としており、生活費の値上がりを実感されている方も多いでしょう。
インフレによる現金の価値減少
インフレ時代で最も危険なのは、現金を銀行に預けたままにすることです。年2%のインフレが続けば、現金の価値は約36年で半分になります。年3%なら、1,000万円の購買力は10年後に約744万円まで減少します。
長寿時代における資産防衛の必要性
人生100年時代では、退職後の生活が30〜40年続く可能性があります。長い老後を豊かに過ごすには、資産の目減り対策が不可欠です。資産運用の目的は、「増やすこと」から「購買力を維持し、次世代へ残すこと」へと変わっています。

長く続いたデフレ時代から脱却し、年数パーセントの緩やかなインフレ時代に突入しています。この傾向は長期間続くものと予想されていますね。
伝統的資産からデジタル資産へ
インフレ対策の王道として、株式、不動産、金(ゴールド)といった伝統的な実物資産が長年、中心的な役割を果たしてきました。しかし近年、「ビットコイン」というデジタル資産が、世界中の投資家や富裕層の間で大きな注目を集めています。
希少性がもたらす価値
ビットコインは発行上限が2,100万枚に設定されており、国家や中央銀行でも増やせません。この希少性により、金と同様に「政府が恣意的に増やせない」価値保存機能を持ちます。特にインフレ環境下で資産価値を守る「デジタル・ゴールド」として評価されています。
社会的信用の向上
2024年、米国でビットコイン現物ETFが承認され、ブラックロックやフィデリティなど大手金融機関が市場に参入しました。ビットコインは投機対象から正統な資産クラスへと進化し、日本でも野村證券や大和証券が富裕層顧客に資産保全手段として提案し始めています。

資産配分の新しい考え方
ビットコイン投資と聞くと、「全財産をつぎ込んで大儲けを狙う」危険な投機を想像されるかもしれません。しかし、実際は違います。
推奨配分:総資産の1〜3%
シニア富裕層が実際に実践しているのは、総資産の1〜3%程度をビットコインに換え、短期的な値動きに一喜一憂せず、数年から十数年という長期スパンで保有し続けるという、極めて保守的で慎重なアプローチです。
資産運用の主役は伝統資産
資産運用の主役は、安定した配当や利息を生む株式や債券などの伝統的な金融商品です。一方、ビットコインは、世界的な金融ショックや円の暴落といった非常事態に備える「保険」として、ポートフォリオのごく一部に配分します——料理でいえば「隠し味」のような存在です。
孫世代への架け橋:デジタル資産と終活
日本のシニア層で暗号資産を保有している人は、まだ6〜7%程度です。利用者の中心は20代から40代の若い世代です。だからこそ、富裕層シニアにとってビットコインは、「子や孫世代が慣れ親しんでいる新しい資産」として、世代を超えた資産分散・相続の手段になり得ます。
ただし、秘密鍵を紛失したり、誰にも伝えずに亡くなった場合、資産は永久に引き出せなくなります。エンディングノートにアクセス方法を記録し、ご家族と共有する「デジタル資産の終活」が不可欠です。
※ このブログの内容をわかりやすくまとめたインフォグラフィックは、次のとおりです。

「税金」と「価格変動」の注意点
ビットコインを保有する際、必ず知っておくべきリスクと課題があります。
価格変動の大きさ
ビットコインは大きく上昇した後、短期間で30%以上下落することがあります。そのため、「失っても日々の生活に影響が出ない余剰資金」の範囲内で購入することが鉄則です。
税金の問題
日本では、株式投資の利益には約20%の税金がかかりますが、ビットコイン売却益は「雑所得」として扱われ、最大55%もの税金がかかります(NISA対象外)。

シニア富裕層は即座の資金化が不要なため、税制改正(申告分離課税20%への変更)を待ちながら数年単位で保有する戦略が主流ですね。

おわりに—「持たない」ことも、ひとつの正解
現代のインフレと長寿化が同時進行する時代において、富裕層シニアにとってビットコインは、もはや「怪しいギャンブル」や「若者の投機対象」ではありません。むしろ、国家の過度なインフレ政策や通貨価値の減少から、長年築き上げてきた大切な資産を守り、次世代へ確実に価値を引き継ぐための、新しい時代の金融ツールとして進化を遂げてきました。
もちろん、投資の基本原則は「十分に理解できないものには手を出さない」ことです。株式や債券といった伝統的な金融商品だけでインフレ対策を行うという判断も、リスク管理の観点から合理的で賢明な選択です。無理をして新しい資産クラスを保有する必要はありません。
しかし、長い人生をかけて守り育ててきたお金を、インフレや予期せぬ経済変動から守るための「第5の資産クラス」として、ビットコインという選択肢が存在すること、そしてその基本的な仕組みや特性について正しい知識を持っておくことは、これからの時代を生きる上で有意義ではないでしょうか。
もし少しでもご興味をお持ちになりましたら、まずは信頼できる金融の専門家や大手暗号資産取引所に相談し、少額から実際に触れてみることをお勧めします。
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