2025年度(2025年4月〜2026年3月)、日本政府と日本銀行(日銀)は、国民生活の安定と経済成長の両立を目指しています。物価高対策、景気回復、成長領域への投資、中小企業支援を柱として、総合的な経済・金融政策を展開する方針です。
特に高市政権は、迅速かつ現場重視の政策運営を明確に打ち出しており、年度を通じて多様な経済対策が切れ目なく実施される見通しです。
政府と日銀は、それぞれ異なる政策目的を持っています。政府は短期的な国民生活の安定を最優先とし、「当面の物価高対策(家計支援)」に注力します。一方、日銀は「持続的な物価上昇と金融政策の正常化」という中長期的な経済基盤の確立を重視しています。

この二つの政策は相互に補完し合いながら進められます。そのため、時系列に沿った3つの段階で理解することが必要ですね。
本記事では、2025年度の高市政権以降の日本経済・金融政策の全体像を解説します。政府の財政政策と日銀の金融政策の両面から、時系列に沿って説明します。また、これらの政策が株式市場、債券市場、為替市場に与える影響についても、分かりやすく考察します。
財政出動の決定と家計への即時支援
この時期は、物価高が国民生活に与える影響への迅速な対応と、そのための大規模な財源確保が柱となります。
迅速な物価高対策と補正予算の成立(2025年10〜12月)
政府は、冬に向けた家計の負担軽減を最優先事項とし、法改正を伴わない暫定措置や既存の補助枠を活用した現金給付などの「迅速対応」策を講じます。
- 物価高対策の強化: ガソリン税の暫定税率廃止が速やかに検討され、光熱費や食料品のコスト抑制策が審議・実施段階に入っています。地方自治体への交付金も上乗せされ、自治体独自の対策も推進されます。特に、冬期の電気・ガス料金の負担軽減策(補助金)の財源確保が重要視されています。
- 補正予算の編成・成立: 物価高や急激な経済変動に対応するため、2025年度補正予算案が国会で審議・成立予定です。予算規模は13.9兆円以上という大規模支出が見込まれています。この財源は主に国債増発で賄う方針です。
現状維持と「見極め」の継続
日本銀行(日銀)は12月の金融政策決定会合で現状維持の姿勢を続ける見通しです。ただし、インフレリスクが高まれば利上げが12月に前倒しされる可能性があります。
- 静観の理由: 日銀が追加利上げを判断する最大の条件は、2026年春闘で高い賃上げが実現するかどうかです。12月時点ではその見極めには時期尚早であり、加えて米国の新政権(トランプ政権)による関税政策が世界経済に与える影響も慎重に分析する必要があります。
政策の実行と金融政策の「本命」
年度末にかけて、財政政策の具体的な効果が国民生活に現れる一方、日銀は金融政策の「正常化」を進める可能性が高い時期です。
補助金の実行と成長投資の本格化(2026年1〜3月)
補正予算に基づき、1月使用分から電気・ガス料金への補助金が実行されます。これは国民が経済対策を最も実感できる施策です。また、賃上げ促進策が強化されます。
- 賃上げ促進: 2026年春闘を後押しするため、中小企業向けの賃上げ促進税制の拡充やインセンティブ制度が適用されます。成果連動型の人材支援や新卒・中高年雇用への補助枠も広がります。
- 成長投資: GX(脱炭素化)、DX(デジタル投資)、先端技術・安全保障領域など、重点成長分野向けの補助金や助成制度が本格稼働し、企業投資・雇用創出への波及が期待されます。
追加利上げの時期
年度内の日銀による次の利上げは、1月の決定会合が有力視されています。一方、市場では12月に追加利上げが行われる可能性がより高いと見ています。
- 利上げを後押しする要因: 1月には春闘の初動(経団連方針・労組要求案)が判明します。高賃上げの見通しが立てば、日銀は利上げに動きやすくなります。多くのエコノミストは政策金利を0.25%引き上げ、0.75%とすると予想しています。
- 国債買入れの調整: 日銀は「慎重な正常化」の姿勢を維持しつつ、長期国債の買入れを景気・物価動向に応じて段階的に縮小します。ETF・J-REITの新規買入れは停止または縮小、社債・CPの買入れは段階的に終了する方針です。

金融市場および投資家・生活者への影響
政府と日銀の政策は、金融市場と家計に直接影響します。投資家・生活者は、給付や税制優遇を活用しながら、金融環境の変動に備えることが重要です。
金融市場への影響
政府の大規模な財政出動(補正予算)と日銀の金融政策正常化が同時期に進むため、市場では慎重な運用が求められます。
- 長期金利の上昇圧力: 補正予算の財源を国債増発で賄う方針のため、大規模な財政刺激は長期金利の上昇圧力を高めます。日銀の国債買入ペース縮小(テーパリング)も、金利上昇を促す要因です。
- 市場変動リスク: 日銀の利上げ観測(特に1月)と補正予算の成立・実行が重なると、市場変動が拡大するリスクがあります。政府と日銀の緊密なコミュニケーションと説明責任が、市場安定の鍵となります。
- 証券・不動産市況: 金利政策の変化や補正予算の規模は、証券・不動産市況に直接影響します。
投資と消費への影響
- 消費と家計: 物価対策やエネルギー支援策の早期実施により、家計への支援効果が早期に現れる見込みです。給与増が進みにくい中小企業や非正規労働者向けの生活支援金・補助金も拡充されています。
- 成長分野への投資機会: 成長投資補助(GX・DX・安全保障)は、設備投資関連銘柄や雇用市場の拡大要因となります。産業構造転換期の投資先発掘が重要です。研究開発費や設備投資への助成が、企業投資・雇用創出を促進します。
おわりに
高市政権はスピード重視・現場志向を特徴としており、年度内に実効的な経済対策が矢継ぎ早に展開される見込みです。家計や企業は給付や税制優遇を積極的に活用し、金融環境の変動に柔軟に備えることが重要です。
物価対策・エネルギー支援策により、消費や家計への支援効果が早期に現れるでしょう。成長投資補助(GX・DX・安全保障)は設備投資関連銘柄や雇用市場の拡大要因となるため、産業構造転換期の投資先発掘が鍵となります。

金利政策の変化や補正予算規模は、金融市場および証券・不動産市況に直接影響します。特に国債増発や利上げのタイミングには注意が必要ですね。
これらの政策を注視しながら、下記のポイントを踏まえ、株式市場の乱高下に一喜一憂せず、冷静に市場動向を見守ることが大切です。
《 年度内の時系列ポイント 》
| 時期 | 政府(財政政策) | 日本銀行(金融政策) | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 11〜12月 | 補正予算(物価高対策)を審議・成立。ガソリン税等負担緩和を検討。 | 12月会合は現状維持が有力。春闘や海外情勢を見極める。 | 国債増発による長期金利上昇リスクが高まる。 |
| 1〜2月 | 冬の電気・ガス代補助金が実行され、家計への直接支援がピークに。賃上げ支援制度が本格化。 | 1月会合が追加利上げ(0.75%へ)の「本命」タイミングか。 | 利上げ実行観測で金利、為替、不動産市場の変動が拡大。 |
| 3月 | 2026年度本予算を成立させる。 | 3月の春闘集中回答日の速報値を分析。結果次第で、次期(2026年度以降)の政策を検討。 | 賃上げの持続性に関するデータが景気回復期待を左右する。 |
《 参考情報 》




