アリッサム完全ガイド:香りの絨毯を作る「名脇役」
アリッサムは、小さな花が密集して咲き、株全体がふんわりと広がるアブラナ科の草花です。一般的に「アリッサム」と呼ばれていますが、厳密には「スイートアリッサム(ロブラリア属)」を指します。日本では秋に種をまき、春に花を楽しむ「秋まき一年草」として扱うのが定番です。
甘い香りと絨毯のように広がる美しい花姿は、ガーデニング初心者から上級者まで多くの人を魅了し続けています。

愛らしい姿と扱いやすさから「名脇役」として親しまれていますが、その特徴を深く理解することで、より美しく、長く楽しめますね。
本記事では、アリッサムの魅力、種類、育て方、そしてガーデニングでの手入れや活用方法を詳しく解説します。
アリッサムの3つの魅力
アリッサムが長年愛され続ける理由は、主に以下の3つの特徴にあります。
「花の絨毯」を作る圧倒的なボリューム感
アリッサムの花は直径数ミリと非常に小さいですが、4枚の花弁を持つ小花が密集し、株全体を覆い尽くすように咲きます。その姿はまるで「小さなブーケ」や「花の絨毯(カーペット)」のようです。
草丈は10〜15cm(品種によっては20cm程度)と低く、横へこんもりと広がる性質を持つため、地面を覆うグランドカバーや花壇の縁取りとして最適です。隙間を自然に埋めてくれます。
癒やしを与える「甘い香り」
「スイートアリッサム」という名前が示す通り、蜂蜜やバニラを思わせるほのかな甘い香りが特徴です。特に気温が上がると香りが強くなり、春の訪れを嗅覚でも感じさせてくれます。
玄関先やベランダ、人が通る小道沿いに植えると、風に乗ってふんわりと香りが漂い、通りがかる人を楽しませてくれます。
豊富な花色と長い開花期間
花色は定番の白に加え、ピンク、紫、オレンジ、アプリコット、クリーム色、赤など非常に多彩です。パステル調のやわらかい色合いが多く、ナチュラルで可愛らしい雰囲気を演出できます。また、寒さに比較的強く、秋に植え付けると冬を越えて春(10月〜5月頃)まで長期間咲き続けるのも大きなメリットです。
用途に合わせて選べる多彩な品種
「アリッサム」として流通しているものには、いくつかのタイプがあります。環境や用途に合わせて選ぶことが成功の秘訣です。
- スイートアリッサム(基本種) 最も一般的なタイプで、白やピンク、紫など花色が豊富です。香りが良く、こぼれ種で増えることもありますが、日本の高温多湿に弱いため、基本的には夏前に枯れる一年草として扱われます。

- スーパーアリッサム(改良品種) 暑さに弱い弱点を克服した改良品種です。「スノープリンセス」や「パープルプリンセス」などが代表的で、真夏や真冬は花数が減るものの、適切に管理すればほぼ一年中開花します。生育旺盛で、一株でもボリュームたっぷりに育つのが魅力です。

- 宿根アリッサム(アレチナズナ属) 黄色い花を咲かせるものが多く、暑さに強く夏越しが可能です。シルバーリーフの品種もあり、ロックガーデンの素材としても利用されます。

- 斑入り品種 「フロスティーナイト」など、葉に白や黄色の斑が入るタイプです。花がない時期でもカラーリーフとして楽しめ、寄せ植えのアクセントになります。

失敗しない育て方の基本
アリッサムは初心者にも育てやすい丈夫な植物ですが、「涼しい時期に強く、暑さと蒸れに弱い」という性質を理解しておくことが大切です。
栽培環境と用土
日当たりと風通しの良い場所を好みます。日光が不足すると茎が間延び(徒長)し、花つきが悪くなるため、しっかり日が当たる場所で管理しましょう。
土は水はけの良い「草花用培養土」が適しています。自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)と腐葉土を7:3の割合で混ぜます。鉢植えの場合は、底に軽石を入れて過湿を防ぐ工夫も有効です。
水やりの極意
「土の表面が乾いてからたっぷりと」が鉄則です。
アリッサムは過湿を嫌うため、土が常に湿った状態だと根腐れを起こします。根付いた後の地植え(花壇)なら、基本的に自然の雨だけで十分です。鉢植えの場合は、メリハリのある水やりを心がけましょう。
肥料の与え方
開花期間が長いため、肥料切れに注意が必要です。植え付け時に緩効性肥料を元肥として混ぜ込み、開花中は2〜3週間に1回程度、液体肥料を与えると花が途切れず元気に咲き続けます。
長く美しく楽しむための手入れ
植えっぱなしにするのではなく、少し手を加えることで、春まで美しい姿を保つことができます。
切り戻し(剪定)
これが最も重要な作業の一つです。花が一通り咲き終わったり、株が乱れてきたりしたら、草丈の半分〜3分の1程度まで思い切って「切り戻し」を行います。 これにより、株の中の風通しが良くなって蒸れを防げるだけでなく、新しい芽が出て再びこんもりと花を咲かせるようになります。
花がら摘み
咲き終わった花をそのままにしておくと、種を作ることにエネルギーが使われ、株が弱ってしまいます。また、落ちた花弁は病気の原因にもなるため、こまめに摘み取ることが大切です。
夏越しの対策
日本の夏はアリッサムにとって過酷です。一年草タイプは夏に枯れるものと割り切るのも一つの方法ですが、夏越しに挑戦する場合は、鉢を半日陰の涼しい場所に移動させるか、切り戻して株を休ませ、風通しを確保してください。

自宅では、一年草タイプのスイートアリッサムを育てていますが、スーパーアリッサムのような耐暑性品種を選ぶのも賢い選択ですね。
ガーデニングでの活用シーン
アリッサムは「名脇役」として、主役の花を引き立てながら全体をまとめる万能選手です。
- 寄せ植えの足元に パンジー、ビオラ、チューリップ、ネメシアなど、背の高い春の花との相性が抜群です。主役の足元にアリッサムを植えると、土の表面や隙間を埋め、全体をふんわりと優しい雰囲気にまとめてくれます。白いアリッサムはどんな色とも調和し、紫やピンクはロマンチックな演出に最適です。

- 花壇の縁取り・グランドカバー 低く横に広がる性質を活かし、花壇の手前や小道沿いに帯状に植えると、レースのような可愛らしい縁取りが完成します。雑草を抑える効果もあり、スーパーアリッサムなどを広めに植えれば、長期間「花の絨毯」を楽しめます。
- ハンギングバスケット・鉢植え 枝垂れるように咲く姿も魅力的なため、ハンギングバスケットや背の高い鉢の縁に植えるのもおすすめです。空間に花が溢れ出すような立体的な演出ができます。
- 香りのコーナー作り ハーブや他の香りのある花と組み合わせ、玄関やテラスに置くことで、視覚だけでなく嗅覚でも楽しめる「香りのガーデン」を作ることができます。
これらの内容を分かりやすくまとめた動画サイトは、以下のとおりです。ぜひご覧ください。

おわりに
アリッサムは、可憐な見た目と甘い香り、育てやすさを兼ね備えた魅力的な植物です。花壇、寄せ植え、ハンギングなど、さまざまな場面で活躍します。
主役として目立つことはありませんが、全体の雰囲気を美しくまとめる縁の下の力持ちです。寄せ植えのベースや花壇の縁取り、グランドカバーとして取り入れれば、庭やベランダ、玄関周りを一段と華やかに演出してくれます。
日当たりの良い場所、水はけの良い土、適切なタイミングでの切り戻し——この3つのポイントを押さえれば、初心者の方でも春いっぱいに広がる美しい花の絨毯を楽しめます。
小さな花が密集して咲く愛らしい姿と、ふわりと漂う甘い香り。視覚と嗅覚の両方で楽しませてくれるアリッサムを、ぜひあなたの庭に迎えてみてください。

まずはお好みの色や品種を選んで、華やかで香り豊かな暮らしを始めてはいかがましょうか。
《 参考情報 》




