健康生活ガイド(心筋梗塞編)

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連日の猛暑が続く中、皆様はいかがお過ごしでしょうか。体調管理には十分ご注意いただいていますか。夏季は熱中症のリスクだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる重大な疾患の発症リスクも大きく高まる時期です。脳梗塞については、以前のブログ記事で詳しく解説しました。

健康生活ガイド(脳梗塞編)
脳梗塞とは、血栓(血の塊)が脳の血管を詰まらせることで、脳の血管や脳細胞に障害を引き起こす病気です。この病気は、血流が遮断されることで脳の一部が酸素不足に陥り、ダメージを受けることによって発生します。特に夏は汗をたくさんかくため、脱水状態に...

夏は発汗量が増え、知らず知らずのうちに体内の水分が急速に失われていきます。特に高齢者は加齢により喉の渇きを感じにくくなるため、必要な水分量を十分に摂取できず、気づかないうちに脱水状態に陥りやすい傾向があります。

脱水状態が進むと血液が濃くなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが大幅に高まることが分かっています。特に睡眠中は水分摂取ができないため、脱水が進行し、早朝から午前中の発症率が高くなります。

本記事では、高齢者に特に危険な心筋梗塞について、その原因、発症の仕組み、そして日常生活での予防策と早期発見のポイントを分かりやすく解説します。この情報が皆様の健康維持にお役立ていただければ幸いです。

心筋梗塞の原因

脳梗塞も心筋梗塞も、血管が詰まり細胞が酸欠状態になって組織が壊死する病気です。今回解説する心筋梗塞は、冠動脈の閉塞により心筋が壊死し、胸痛や息苦しさ、冷や汗などの症状を引き起こします。

これは命に関わる疾患であり、救命されても重度の後遺症を残すリスクが高いため、夏場の危険因子を理解し予防に努めることが重要です。

夏に増加する主な体内変化

夏場に心筋梗塞が増える主な原因は「脱水」と「発汗」によるものです。これらにより、体内では以下のような変化が起こります。

脱水による血液の粘度上昇

  • 夏の暑さで大量に汗をかくにもかかわらず、水分補給が不足すると、体内の水分量が減って脱水状態になります。
  • 脱水が進むと、血液中の水分も減り、血液の粘り気が増します。これは濃縮されたジュースのようなイメージです。
  • このドロドロになった血液は血管内を流れにくくなり、血栓(血の塊)ができやすくなります。
  • 特に睡眠中は水分補給ができないため、寝ている間に脱水が進み、明け方から午前中にかけて脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが高まります。

発汗によるミネラルバランスの変化

  • 汗と一緒に体に必要なミネラル(ナトリウム、カリウムなど)も失われます。
  • ミネラル不足は体内の電解質バランスを崩し、心臓の働きや血管の収縮・拡張に影響を与えます。

温度差による血管への負担

  • 屋外の猛暑と冷房の効いた室内との激しい温度差は、自律神経の働きを乱し、血管を収縮・拡張させることで大きな負担をかけます。
  • 特に冷えすぎた室内から急に暑い屋外に出たときや、その逆の場合に血圧が急変動して血管トラブルを招きやすくなります。

基礎疾患の悪化

  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病や、不整脈(心房細動など)を持つ人は、元々血栓ができやすい状態にあります。
  • 夏場の脱水や体調不良がこれらの基礎疾患を悪化させ、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクをさらに高めます。

主な症状と早期受診の重要性

これらの病気は、発症から治療開始までの時間が回復に大きく影響します。何か異変を感じたら、すぐに救急車を呼び、医療機関を受診することが極めて重要です。

心筋梗塞のサイン

  • 胸の激しい痛み: 胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような強い痛みが特徴です。この痛みは数分から数十分続き、一過性の痛みとは異なります。「胸が押しつぶされる感覚」や「重い物を乗せられたような感覚」と表現されることもあります。
  • 放散痛: 心臓からの痛みが左肩、左腕(特に小指側)、あご、歯、背中などに広がることがあります。このような特徴的な痛みの広がり方は心筋梗塞の重要なサインです。胸の痛みよりも、これらの放散痛のほうが強く感じられる場合もあります。
  • 息苦しさ、呼吸困難: 急に息ができなくなったような感覚や、息を吸っても十分な空気が肺に入らない感覚に襲われます。この症状は横になると悪化することが多く、座ったり立ったりしたほうが楽に感じられることがあります。
  • 冷や汗、吐き気、意識の低下: 突然の冷や汗とともに吐き気や嘔吐を伴うことがあります。めまい、立ちくらみ、極度の疲労感、意識混濁なども現れることがあります。高齢者では、これらの症状が主訴となり、胸痛のない「無痛性心筋梗塞」の可能性もあります。

「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたら、すぐに119番へ。心筋梗塞は緊急事態です。症状がはっきりしなくても、普段と違う体調不良や上記の症状が少しでもあれば、迷わず救急車を呼びましょう。早期治療が生存率を左右します。

予防対策

夏場のリスクを避けるために、以下の具体的な予防対策を生活に取り入れましょう。

こまめな水分補給の徹底

  • 喉が渇く前に飲む: 喉の渇きを感じた時点ですでに脱水が始まっています。意識的に水分を摂りましょう。
  • 少量ずつ頻繁に: 一度に大量ではなく、コップ1杯程度を1~2時間おきにこまめに摂るのが効果的です。
  • 就寝前と起床時: 寝る前と起きた直後にコップ1杯の水分を摂る習慣をつけましょう。
  • 入浴前後: 入浴中も汗をかくため、入浴前後には必ず水分補給を行いましょう。
  • 適切な飲み物選び: 水やお茶(カフェインの少ない麦茶など)が基本です。大量に汗をかいた時は、スポーツドリンクや経口補水液で塩分・糖分・ミネラルも補給しましょう。アルコールは利尿作用があるため、水分補給には適しません。

室内環境の管理

  • エアコンの適切な使用: 我慢せずエアコンを使い、室温を27~28℃程度に保ちましょう。扇風機と併用して空気を循環させると効果的です。
  • 夜間の熱中症対策: 寝苦しい夜は、エアコンのタイマー設定や除湿機能を活用して、快適な睡眠環境を確保しましょう。
  • 急激な温度変化を避ける: 室内外の温度差は5℃以内に抑えるなど、急激な温度変化を避ける工夫をしましょう。

バランスの取れた食事と体力の維持

  • 夏バテ対策: 食欲がなくても、タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂り、体力低下を防ぎましょう。
  • 消化の良い食事の工夫: 冷たい麺類だけでなく、温かいスープや消化の良いおかずも取り入れましょう。
  • 塩分補給: 大量に汗をかく場合は適度な塩分補給も重要ですが、高血圧の方は医師の指導に従いましょう。

適度な運動と生活習慣病の管理

  • 運動: 炎天下での運動は避け、涼しい時間帯(早朝や夕方)に無理のない範囲でウォーキングなどを行いましょう。
  • 基礎疾患の管理: 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病がある方は、かかりつけ医と相談し、夏場も確実に服薬を継続しましょう。
  • 定期的な健康チェック: 血圧測定などを日課にし、自身の体調変化に早く気づけるようにしましょう。

最後に

夏の暑さはこれからが本番です。熱中症予防と合わせて、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気のリスクも意識し、上記の予防対策をしっかり実践しましょう。ご自身の体調管理はもちろん、周囲のご家族やご友人にも気を配り、声をかけ合うことが大切です。

心筋梗塞は、心臓の血管(冠動脈)が血栓などで詰まり、心臓の筋肉が壊死する重篤な病気です。一般的には冬に多いとされていますが、実は夏も注意が必要です。特に高温多湿の日本の夏では、年齢や健康状態に関わらず、心筋梗塞のリスクが高まることが知られています。

夏の心筋梗塞の最大の敵は「脱水」とそれに伴う「血液濃縮」です。これは冬とは異なるメカニズムで発症します。予防の鍵は、喉が渇く前にこまめに水分(+適宜塩分)を補給することと、エアコンを適切に使って体を暑さから守ることです。特に高齢者や持病のある方はリスクが高く、症状も分かりにくいため、本人と周囲の注意深い観察が必要です。

暑さを甘く見ず、水分補給と温度管理を習慣化し、体調の変化に敏感になることで、夏を安全に快適に過ごしましょう。少しでも「おかしいな」と感じたら、迷わずに医療機関を受診することが命を守る最善の策です。

【 参考情報 】

「心筋梗塞の前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説! | メディカルドック
心筋梗塞の前兆とは?Medical DOC監修医が心筋梗塞の前兆となる初期症状・原因・セルフチェック法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
急性心筋梗塞|国立循環器病研究センター冠疾患科
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心筋梗塞の症状~症状別の起こりやすさや注意すべき前兆について~
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