健康生活ガイド(神秘の腎臓編)

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腎臓は、私たちの腰の少し上、背中側にある握りこぶし大の臓器です。これは単なる老廃物の排出機関ではありません。最新の研究により、腎臓は私たちの寿命を左右する重要な役割を果たしていることが明らかになり、体内の巨大な情報ネットワークの要(かなめ)として、世界中の科学者から注目を集めています。

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腎臓は尿の生成と老廃物の排出、そして血圧のコントロールにおいて中心的な役割を担っています。血圧を制御するため、腎臓は「レニン」というメッセージ物質を全身に送ります。

レニンが放出されると全身の血管に変化が起き、血圧が上昇します。腎臓はレニンの量を絶妙に調整することで、血圧を適切に維持しています。

高血圧の診断に際して重要なレニン、アルドステロンの検査
血液量、電解質(ナトリウムやカリウム)、血圧のバランスを保つ上で重要な役割を果たしており、この二つを調べることで、高血圧の原因を推察することができます。

本記事では、このように身体の中で重要な役割を担う腎臓について、最新の知見に基づき解明された新たな機能を考察します。

最近判明した役割について

血圧のコントロールと全身の情報ネットワークの要

高血圧患者の多くは、腎臓からのレニンの過剰放出が原因とされています。腎臓の自律神経への外科的治療により、この血圧調節機能を正常化し、血圧を適切な範囲に戻すことができるようになりました。

従来は脳からの一方的な指令で他の臓器が動くと考えられていましたが、最新の研究では、臓器同士が直接的にコミュニケーションを取りながら機能していることが明らかになっています。

この情報伝達は、全身に張り巡らされた約10万kmの血管網を通じて行われ、腎臓はその中でも特に血管が密集している器官です。

腎臓は、このネットワークの中心として、他の臓器へ向けて様々な物質を産生し、全身の機能を精密にコントロールしています。

リンの調節と寿命への影響

血中の「リン」濃度が、動物の寿命を左右する重要な要素として注目を集めています。リンは肉類や豆類に含まれる必須栄養素で、その血中濃度は腎臓によって調節されています。興味深いことに、血中リン濃度が低い動物ほど長寿である傾向が確認されています。

リンは生命維持に不可欠な栄養素ですが、血中濃度が過剰になると、様々な疾患を引き起こし、生命の危機に直結することが明らかになっています。

この発見のきっかけは、日本の研究者が偶然に発見した遺伝子操作マウスでした。このマウスは腎臓の特定遺伝子が機能せず、通常2年半の寿命が2ヶ月半まで短縮されていました。腎臓は骨(体内のリン貯蔵庫)と協調して、血中リン濃度の上昇を防ぐよう排出量を調整しています。

腎機能の低下は老化を促進し、逆に腎機能を健全に保つことで寿命の延伸が期待できます。このことから、腎臓機能と寿命には密接な関連があると考えられています。

研究について | 自治医科大学 分子病態治療研究センター 抗加齢医学研究部
抗加齢医学研究部では、以下の2つのテーマに取り組んでいます。【テーマ1】 リンと老化私たちは、「リン」が脊椎動物に特有な老化加速因子であることを発見しました。リンは、生命に必須の6大元素(水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、リン)の一つであり、細...

急性腎障害(AKI)の原因と深刻さ

腎臓は複雑で精密な仕組みで全身をコントロールしていますが、その複雑さゆえに人体で最も傷つきやすい宿命を背負っています。近年、世界の医療現場では腎臓の状態を常時監視することの重要性が強調されています。

急性腎障害(Acute Kidney Injury, AKI)とは、腎臓の機能が急激に低下する状態を指します。これは多臓器不全を引き起こし、命にも関わる深刻な状態となります。

その深刻な現状とは

これまで正確な患者数は把握されていませんでしたが、先進国の入院患者全体の5人に1人が急性腎障害を発症しているという報告が医療界に大きな衝撃を与えました。

ヨーロッパだけでも、毎年20万人もの救える命が急性腎障害によって失われているとされています。

腎臓以外の病気で入院した患者が急性腎障害を起こす理由

これは、腎臓が体内のネットワークの要だからです。腎臓以外の病気であっても、その影響が波及して腎臓にダメージを与えることがあります。

(例)心不全:体内を流れる血液が減少し、大量の血液が流入する腎臓はダメージを受けます。腎臓は他の臓器とも密接に関わっているため、どの臓器に異常が生じても腎臓に悪影響が及ぶことが分かっています。

こうした臓器間の関係は「心腎連関」や「肝腎連関」、「脳腎連関」、「肺腎連関」と呼ばれ、現代医学において重要なキーワードとなっています。

腎臓は『肝腎連関』『心腎連関』『脳腎連関』『肺腎連関』など臓器同士が連携するネットワークの要|#NHKスペシャル
京都大学大学院医学研究科の柳田素子教授によれば、腎臓は『心腎連関』『脳腎連関』『肺腎連関』『肝腎連関』など臓器同士が連携するネットワークの要となっているそうです。

悪循環による多臓器不全

ネットワークの要である腎臓が機能を失うと、その悪影響が全身の臓器に波及します。その結果として多臓器不全に陥り、数日のうちに容体が悪化して命を落とすことになりかねません。

これまで単なる多臓器不全として扱われてきた死亡例の多くで、実は腎臓が引き金となっていた可能性が指摘されています。

このように、腎臓は私たちの体内で絶え間なく働き、生命維持の要となっています。その複雑で精密な仕組みを理解し、適切にケアすることは、私たちの健康と寿命を守る上で極めて重要です。

最近、ニュースなどで多臓器不全により亡くなる方の報道を耳にします。以前は多臓器不全の発生メカニズムを理解していませんでしたが、腎機能の喪失が多臓器不全を引き起こす可能性があることを初めて知りました。

最後に

腎臓は、腰のやや上に左右一つずつある、そら豆のような形をした臓器です。この臓器は、老廃物の排泄と尿の生成、体液量と電解質バランスの調節、血液の酸性・アルカリ性(pH)の調節、血圧の調整、ホルモンの産生という重要な役割を担っています。

急性腎障害は、様々な原因で腎機能が急激に低下する深刻な状態です。早期発見と適切な初期対応が極めて重要で、原因を特定し迅速に治療を開始することで、腎機能の回復や予後の改善が期待できます。

予防には、日頃から脱水を防ぎ、薬剤を適切に使用し、基礎疾患をしっかり管理することが大切です。急な尿量減少、むくみ、全身倦怠感などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

急性腎障害(AKI)から完全に回復せず、慢性腎臓病(CKD)へ移行したり、末期腎不全となって継続的な透析療法が必要になることもあります。また、AKIを発症した患者さんは、心血管疾患を発症するリスクも高まります。

このため、AKIから回復後も定期的な腎機能検査を受け、塩分制限、血圧管理、血糖管理などの生活習慣の管理を通じて、CKDへの進行や再発を予防することが重要です。

慢性腎臓病(CKD)の治療を受けている総患者数は、62万9,000人 令和5年(2023) 「患者調査の概況」より | 生活習慣病の調査・統計 | 日本生活習慣病予防協会
日本生活習慣病予防協会は、生活習慣病の一次予防を中心に、その成果、診断、治療、リハビリテーションに関する知識の普及啓発、生活習慣病の調査研究を行うことにより、国民の健康の増進に寄与することを目的に活動しています

慢性腎臓病が進行すると透析が必要になります。透析を開始すると、その後継続して治療を受ける必要があるため、慢性腎臓病の予防とケアが非常に重要ですね。

【 参考情報 】

NHKスペシャル「腎臓が寿命を決める」 血圧を下げて心臓を助ける
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【医師が解説】「沈黙の臓器」の腎臓 末期にならないと症状が出ない病気を防ぐには? | 健康 ねとらぼリサーチ
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