健康生活ガイド(老化細胞編)

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~科学が拓く老化細胞の未来へ~

「老化は自然現象ではなく、治療可能な病気である」——今、世界の科学者の間でこの新しい考え方が広まりつつあります。

私たちの体の細胞は、本来、分裂して入れ替わり、傷ついた組織を修復します。ところが年齢を重ねたり、紫外線・喫煙・炎症・ストレスで細胞が傷んだりすると、「もう分裂しない」と引退状態に入る細胞が出てきます。これが老化細胞です。

かつて治せないと思われていた感染症が医学で克服されたように、今は老化そのものを治療し、健康な期間を延ばそうという挑戦が始まっていますね。

本記事では、シニア世代の皆様にとって関心の高い「最新の老化治療研究」について、専門用語をかみ砕いて分かりやすく解説します。

体のサビ、「ゾンビ細胞」とは?

私たちの体は約37兆個の細胞でできています。細胞は分裂を繰り返して新しくなりますが、古くなったり傷ついたりすると分裂を止めます。

細胞分裂の回数と37兆個の細胞に到達するまでの計算 - 勉強パイオニア
人間の体には約37兆個の細胞があると言われています。では、一つの細胞からどれだけ分裂を繰り返せば、37兆個の細胞に到達するのでしょうか?この記事では、細胞分裂の回数とその計算方法について解説します。 目次 細胞分裂の基本

通常は免疫細胞が片付けてくれますが、加齢とともに処理が追いつかなくなり、死ぬはずの細胞が体内に居座り続けます。これが「老化細胞」、通称「ゾンビ細胞」です。

ゾンビ細胞の厄介な点は、ただ居座るだけでなく、SASP(サスプ)と呼ばれる有害な炎症物質をまき散らすことです。

  • 腐ったミカンの原理:箱の中の一つの腐ったミカンが周りも腐らせるように、ゾンビ細胞は周囲の元気な細胞まで老化させます。
  • 全身への悪影響:まき散らされた炎症物質は、動脈硬化、糖尿病、認知症、筋力低下など、多くの老年病の原因になると考えられています。

老化細胞を除去する薬「セノリティクス」

このゾンビ細胞だけを狙い撃ちして除去する薬を「セノリティクス」と呼びます。 東京大学医科学研究所などによるマウス実験では、この薬で老化細胞を除去した結果、筋力が回復し、動脈硬化や腎障害が改善するという、まさに「若返り」のような成果が出ています。

セノリティクスとは?老化細胞をターゲットにした新たな治療法の全貌
セノリティクスとは老化細胞を選択的に除去し、加齢関連疾患を抑制する最新の治療法です。研究の歴史、SGLT2阻害薬や免疫細胞による効果、今後の可能性を詳しく解説しています。

現在、人間への応用(臨床試験)も始まっています。特に「特発性肺線維症」や「糖尿病性腎臓病」などの治療薬として、抗がん剤の一種(ダサチニブ)と植物成分(ケルセチン)を組み合わせた投与などが試されており、組織の機能を改善する兆しが見え始めています。

ダサチニブとクエルセチンの併用はラット海馬における老化細胞の除去とアポトーシス細胞の減少を通して学習と記憶における過剰トレーニング誘発欠損を軽減する【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
文献「ダサチニブとクエルセチンの併用はラット海馬における老化細胞の除去とアポトーシス細胞の減少を通して学習と記憶における過剰トレーニング誘発欠損を軽減する【JST・京大機械翻訳】」の詳細情報です。J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター...

「夢の薬」の現実と注意点

しかしながら、ここで非常に重要な注意点があります。現時点においては、これらの薬剤はあくまでも「研究段階」にあり、実用化にはまだ時間を要する状況です。

まだ標準治療ではない

現時点では「これを飲めば誰でも安全に若返る」という段階には達していません。マウス実験で目覚ましい成功を収めた薬でも、人間を対象とした臨床試験では期待通りの効果が得られなかった事例があります。例えば、変形性膝関節症の治療薬などがその代表例です。

副作用のリスク

老化細胞には、傷ついた組織を修復する際に必要な「良い役割」もあることが分かっています。そのため、無闇に除去すると、本来必要な治癒プロセスが阻害されたり、予期しない副作用が生じたりする恐れがあります。このリスクは専門家からも指摘されています。

なお、未承認の「若返り治療」や個人輸入薬には高いリスクがあるため、十分ご注意ください。

今日から始められる「天然の老化対策」

夢の薬が病院で処方されるまでには、まだ数年から10年かかる見込みです。しかし、待つだけではありません。科学的に効果が期待できる生活習慣があります。

「赤い果物」を食べる

イチゴに豊富な天然成分「フィセチン」や、玉ねぎ・リンゴなどに多い「ケルセチン」は、体内に蓄積した老化細胞の除去を促進し、細胞の健康を保つ働きがあることが研究で明らかになっています。

ケルセチンとフィセチン:どちらのフラボノイドがより高い健康効果をもたらすか?- BSTBIO
ケルセチンやフィセチンのようなフラボノイドは、その幅広い効能から健康界で大きな注目を集めている。フラボノイドは日常的な食品に含まれているが

運動で細胞を「掃除」する

筋トレやウォーキングなどの運動は、筋肉から若返りホルモン(マイオカイン)を分泌させ、免疫を活性化し、ゾンビ細胞の除去を促します。

やっぱり運動は大切!筋肉が出す「マイオカイン」が病気や老化に関係 | サワイ健康推進課
近年、筋肉が「マイオカイン」という物質を分泌していることが分かってきており、全身のさまざまな臓器に影響を与え、病気や老化の抑制にも関連すると考えられています。研究が進むマイオカインについて、ご紹介します。

適度な空腹でオートファジーを活性化

食べない時間をあえて設けることで、細胞が自らゴミをリサイクルする「オートファジー」が活性化し、細胞の若返りにつながります。

健康長寿のカギを握る「オートファジー」とは | サワイ健康推進課
2016年のノーベル生理学・医学賞で注目された「オートファジー」。近年、研究がさらに進み、加齢とともに発症しやすくなる病気を防ぎ、健康を維持するさまざまな働きがあることが分かってきました。オートファジーの仕組みや、オートファジーの働きを保つ...

※ この内容をわかりやすくまとめたインフォグラフィックは、以下のとおりです。

おわりに:シニアは「過渡期」の最前線に立つ世代

健康なシニア世代の皆様は、人類史上初めて「科学的な若返りの恩恵を受けられるかもしれない最初の世代」です。

科学の世界では、老化細胞を除去する「セノリティクス」や、細胞を初期化するリプログラミングといった革新的な技術が着実に進歩しています。今はまだ過渡期ですが、あと数年、健康な体を維持できれば、やがて登場する新しい医療の恩恵を受けられる可能性が高まります。

そのための戦略はシンプルです。夢の薬を待ちながら、「運動」と「抗酸化の食事(野菜・果物)」で体内の老化細胞を増やさないよう守り抜きましょう。

「無理をしない、急がない」——このゆとりある姿勢こそが、新しい時代の風を感じながら、人生100年時代を豊かに生き抜く最大の秘訣です。今日のお散歩や食事、そして日々のニュースを、前向きな視点で楽しんでください。

参考情報》

老化細胞ってどんなもの? | FANCL 老化研究 | 研究開発 | FANCL ファンケル
FANCL 老化研究の老化研究の今を紹介いたします。FANCL公式サイト - FANCL GROUP(ファンケルグループ)の研究開発、老化細胞ってどんなもの?をご覧頂けます。
老化細胞(ゾンビ細胞)の謎が分かった
老化研究の世界でいま、大注目のキーワードがある。それは、「老化細胞」だ。老化細胞が老化を加速させ、様々な病気の発症に影響を与えていることが分かってきており、この細胞に着目した老化制御研究も盛り上がりをみせている。若い人の体にも存在する老化細...
未来への2つの準備
現在70代前後の皆様は、人類史上初めて「科学的な若返りの恩恵を受けられるかもしれない最初の世代」です。「老化細胞の除去(セノリティクス)」や「リプログラミング」といった革新的技術が進歩しています。健康な体を維持すれば、これらの新しい医療の恩...

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