資金運用(2026年プラチナNISA編)

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2024年に始まった「新NISA」は、現役世代の資産形成を支援する制度です。さらに、この制度のさらなる拡充・改良をするために「新NISA改正」が2026年以降に実施される予定です。

資金運用(2026年 新NISA改正編)
全世代型への進化と柔軟な投資の実現日本では「貯蓄から投資へ」の流れを促すためNISAが導入されました。近年は国民の資産運用ニーズの高まりに応じて、より使いやすく幅広い世代に開かれた制度への見直しが進んでいます。この動きの一環として、金融庁は...

一方、プラチナNISA(仮称)は、日本の個人金融資産の過半数を保有するシニア層向けの「資産活用」と「円滑な継承」を目的とした新制度として、早ければ2026年度以降の導入が議論されています。

新NISAとプラチナNISAの違いは、「果樹園の育て方」に例えると分かりやすいでしょう。

  • 新NISA(現役世代)は、「木を大きく育てる時期」です。 実(配当)がなっても食べずに土に還し(再投資)、木(資産)を大きくすることに専念します。これを「複利効果」と呼びます。
  • プラチナNISA(シニア世代)は、「実を収穫して味わう時期」です。 育った木から毎月落ちる実(分配金)を生活費に充て、最終的にその木を子供たちの果樹園へ植え替える(非課税での相続ロールオーバー)のが理想的な活用法です。

本記事では、政府・金融庁・証券業界で検討中の「プラチナNISA」について、背景、仕組み、メリット、リスク、今すべき準備を体系的に解説します。

導入の背景と目的:なぜ今「シニア版」なのか

日本には2000兆円を超える個人金融資産がありますが、その6割以上を60代以上のシニア層が保有しており、その多くが預貯金として眠ったままです。この巨額の資金を動かすため、プラチナNISAは以下の2つの目的を持って設計されています。

  1. 「資産活用」と「取り崩し」の支援 新NISAは「資産を積み上げる」ための制度ですが、リタイア世代に必要なのは、積み上げた資産を取り崩しながら豊かな老後を送ることです。プラチナNISAは、年金だけでは不足しがちな生活資金を補う「自分年金」作りを支援します。
  2. 次世代へのスムーズな「資産継承」: 高齢者が保有する資産を、生きているうちに投資へ誘導し、最終的には子や孫の世代へ有利な条件で移転させることを目指しています。

想定される制度の仕組み:新NISAとの違い

現在報じられている主な制度設計案は以下の通りです(※検討段階であり確定ではありません)。

  • 対象者:おおむね60歳〜65歳以上のシニア世代
  • 非課税枠:2026年の新NISA改正時に、仮称「こどもNISAやプラチナNISA」がどのような枠組みになるかは未定です。
  • 投資対象の拡大:これが大きな特徴です。新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)では除外されている「毎月分配型投資信託」が、プラチナNISAでは対象に含まれる可能性が高いとされています。

シニア世代は高齢になるほど、収入源が年金中心になります。毎月分配型投資信託は、年金だけでは十分な生活が難しい方にとって、貴重な副収入源となりますね。

シニアにとっての3つの具体的メリット

プラチナNISAが実現すれば、シニア世代の資産戦略は大きく変わります。主なメリットは以下の3点です。

毎月の現金収入を非課税で作れる

シニア層にとって、値上がり益(キャピタルゲイン)よりも嬉しいのが、定期的な現金収入(インカムゲイン)です。

プラチナNISAでは、毎月分配型投資信託や高配当株の配当金・分配金を非課税で受け取れます。約20%の税金がかからないため手取りが増え、年金に上乗せする生活費として活用しやすくなります。

これにより現預金の取り崩しへの心理的抵抗を減らし、「資産寿命」を延ばす効果も期待されますね。

相続税対策としての強力な効果

現在検討されている目玉の一つが、相続税評価額の軽減です。

現金で持っているよりも、プラチナNISA口座で株式や投信として保有しているほうが、相続時の評価額が割り引かれる可能性があります。これにより、資産を圧縮して相続税を節税できる効果が期待されています。

非課税メリットの世代またぎ(ロールオーバー)

最も画期的な提案として議論されているのが、親の非課税口座をそのまま子供へ引き継ぐ仕組みです。

現行制度では相続時にNISA口座は課税口座に移行しますが、プラチナNISAでは親の非課税口座を子供のNISA口座へロールオーバーできる案があります。これにより親が育てた資産を非課税のまま引き継ぎ、複利運用を継続する「資産のバトンタッチ」が可能になります。

決して無視できない「リスク」と「注意点」

メリットが大きい反面、シニア特有のリスクや、商品選定における落とし穴も存在します。

「タコ足配当(元本払戻金)」のリスク

「毎月分配型投資信託」は毎月お金が入ってくるため魅力的に見えます。しかし、運用益が出ていない月でも分配金を出すために、元本(自分が投資したお金)を取り崩して支払う「特別分配金」の仕組みを持つものが多くあります。

これは自分の預金を引き出しているのと同じ状態です。資産価値がどんどん目減りしていくリスクがあります。「安定収入」と勘違いしやすいため、目論見書で分配の健全性を必ず確認してください。

認知機能低下と口座凍結の問題

シニア投資の最大の課題は認知症リスクです。運用中に判断能力が低下すると、口座が凍結され、売却も解約もできなくなる恐れがあります。

対策として、家族が代わりに運用・管理できる法的枠組み(家族信託的な機能)の整備が必要ですが、手続きの煩雑さが懸念されます。

出口での暴落リスク

若年層の長期投資と異なり、シニアには時間の猶予がありません。相続や介護で資金が必要になったタイミングで市場が暴落していれば、資産が大きく毀損している可能性があります。相続税対策を意識しすぎず、リスクを取りすぎないバランス感覚が求められます。

手数料(コスト)の高さ

毎月分配型などの複雑な商品は、一般的なインデックスファンドより信託報酬(手数料)が高めに設定される傾向があります。非課税で得た分が高い手数料で相殺されないよう注意が必要です。

2026年に向けて今すぐ準備すべきこと

まだ構想段階ですが、制度開始に備えて以下の準備をしておくことをおすすめします。

  1. 余剰資金の明確化 生活防衛資金や、将来必ずかかる医療・介護費を除いた「余剰資金(次世代に残してもよいお金)」がいくらあるか確認してください。プラチナNISAはこの余剰資金で行うのが鉄則です。
  2. 家族会議(意向の確認): 「もし相続に有利な制度ができたら、株や投信の形で残してもいいか?」と推定相続人(子など)に確認しましょう。受け取る側が現金を強く望む場合、投資での相続はトラブルの元になりかねません。
  3. 情報の継続ウォッチ 2025年末の「税制改正大綱」で、具体的な制度設計(対象年齢、非課税枠の上限、対象商品など)が明らかになる見込みです。

これらの内容を分かりやすくまとめた動画サイトは、以下のとおりです。ぜひご覧ください。

プラチナNISA:家族の資産の未来とは?
本記事では、60歳以上のシニア層向けの「プラチナNISA(仮称)」について解説しています。この制度の目的は、個人金融資産を投資へ誘導し、経済活性化と次世代への富の移転を促進することです。主なメリットは、子世代への非課税期間の引き継ぎや相続税...

最後に:シニアの資産戦略はどう変わるか

プラチナNISAを一言で表すなら、「分配金を老後の生活費に充てながら、残った資産を次世代へ引き継げる有利な制度」です。

これまでのシニアの資産管理は「預金を守り、残った現金を渡す」という守りの姿勢が主流でした。しかしプラチナNISAが実現すれば、「配当金で今の生活を楽しむ(インカムゲイン)」と「評価額の軽減や非課税移管で賢く残す(相続対策)」を両立できる運用が可能になります。

ただし、木から無理に実をもぎ取りすぎれば(元本取り崩しの分配金)、木は弱って枯れてしまいます。嵐(暴落)が来たときに備える準備も欠かせませんね。

制度の詳細はこれから固まりますが、「投資は自己責任」という側面に加え、「投資は家族への愛(資産継承)」という新しい視点が生まれようとしています。まずは新NISAや預貯金で基盤を固めつつ、2026年の制度具体化を待つのが最善の戦略でしょう。

《 参考情報

【シニア向け】プラチナNISAとは?仕組みやリスクなど始める前に知っておきたいこと - ちょっと得する知識 - ミドルシニアマガジン | マイナビミドルシニア
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