健康生活ガイド(こむら返り編)

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夜中に突然襲ってくる激しい痛み「こむら返り」は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)が異常に収縮・硬直する現象で、医学的には「筋痙攣(きんけいれん)」と呼ばれます。多くの方が経験する辛い症状であり、特に夜間の無防備な状態で起こりやすいのが特徴です。

ほとんどの人が一度は経験するこの現象ですが、なぜ起こるのか、どう予防できるのか、そして発生時にどう対処すれば良いのか、正しく理解している人は意外と少ないものです。

「足がつる」とは、意思とは無関係に筋肉が異常収縮して硬直する現象です。通常、筋肉は脳からの指令で伸縮(弛緩と収縮)を繰り返し、体内の伸縮センサーがこれを絶妙にコントロールしています。

通常、これらの器官がバランスを保ち、「収縮」と「弛緩」の指令を調整しています。しかし、何らかの原因でこのコントロールシステムに不具合が生じると、筋肉に「収縮し続けろ!」という誤った指令が送られ続け、激痛を伴う硬直(筋痙攣)が引き起こされます。

この記事では、夜中の足のつり(こむら返り)について、その原因から予防法、対処法までを、科学的根拠に基づいて具体的かつわかりやすく解説します。

夜中に足がつる、考えられる5つの主な原因

なぜ特に無防備な夜中に、このコントロールシステムのエラーが起こりやすいのでしょうか。その原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。

水分とミネラルのアンバランス

これは最も一般的な原因です。私たちは就寝中にコップ1杯(約200ml)の汗をかきます。特に夏や厚着して寝る冬は、気づかないうちに水分が失われ、軽い脱水状態に陥ります。

汗とともに筋肉機能に欠かせないミネラル(電解質)も排出されます。特に重要な4つのミネラルは以下のとおりです。

  • マグネシウム: 筋肉をリラックスさせる(弛緩させる)働きがあります。不足すると筋肉が興奮しやすくなります。
  • カルシウム: 筋肉を収縮させる指令を出す役割があります。マグネシウムとのバランスが重要です。
  • カリウム: 筋肉や神経の細胞の活動を調整します。
  • ナトリウム: カリウムと共に細胞のバランスを保ちます。

ミネラルバランスの乱れは筋肉センサーに誤作動を起こし、こむら返りの原因となります。寝る前のアルコールやカフェインは利尿作用で水分・ミネラル不足を悪化させるため、避けるべきです。

日中の筋肉疲労

日中の立ち仕事や激しいスポーツなどで筋肉を酷使すると、筋肉内に乳酸などの疲労物質が蓄積します。この疲労物質が筋肉の正常な収縮・弛緩のプロセスを妨げ、夜間の痙攣を誘発することがあります。

また、普段運動不足の人が突然活発に体を動かした日などは、筋肉が急な負荷に対応できず、夜中にこむら返りを起こしやすくなります。

体の「冷え」

就寝中は体温が下がり、特に体の末端である足先は冷えやすくなります。夏場でも、エアコンの風が直接足に当たり続けると、体は深部から冷えてしまいます。

足が冷えると、血管が収縮して血行が悪くなります。血行不良になると、筋肉に十分な酸素や栄養が届かなくなり、疲労物質も排出されにくくなります。その結果、筋肉が硬直し、わずかな刺激でも痙攣を起こしやすい状態になってしまうのです。

加齢による身体の変化

年齢を重ねると、こむら返りが起きやすくなります。これには、以下のような身体の変化が関係しています。

  • 筋肉量の減少: 加齢とともに筋肉が衰えると、筋肉が疲れやすくなり、血行を促進するポンプ機能も低下します。
  • 体内の水分量の低下: 高齢者は体内の水分量が少なく、脱水状態になりやすい傾向があります。
  • センサー機能の低下: 筋肉の収縮をコントロールする「筋紡錘」などのセンサーの感度が鈍り、誤作動を起こしやすくなります。

病気のサインや薬の副作用

頻繁にこむら返りを繰り返す場合や、日中にも起こる場合は、何らかの病気が隠れている可能性も考慮すべきです。

  • 考えられる病気: 糖尿病、肝硬変、甲状腺機能低下症、閉塞性動脈硬化症(足の血管の動脈硬化)、腰部脊柱管狭窄症(腰の神経の圧迫)など。これらは血行障害や神経の異常を引き起こし、こむら返りの原因となります。
  • 薬の副作用: 高血圧の治療薬(利尿薬など)や脂質異常症の薬の一部には、副作用として筋痙攣を引き起こすものがあります。

「こむら返り」が頻繁に起こる場合は、早めにかかりつけ医や整形外科医に相談しましょう。

こむら返りの徹底予防策

原因が分かれば、対策も見えてきます。日常生活に少しの工夫を取り入れるだけで、あの辛い夜中の痛みから解放される可能性は十分にあります。

食生活を見直す

  • 就寝前の水分補給: 寝る前にコップ1杯の水または経口補水液、スポーツドリンクを飲む習慣をつけましょう。これにより、就寝中の脱水を防ぎます。
  • ミネラルを意識した食事: マグネシウムやカルシウム、カリウムを豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。
  • バランスの良い食事: 特定の食品に偏らず、多様な食材から栄養を摂ることが、体全体のバランスを整える上で最も重要です。

適度な運動と就寝前のストレッチ

  • 日中の軽い運動: ウォーキングや軽いジョギングは、全身の血行を促進し、筋肉の柔軟性を保つのに効果的です。
  • 就寝前のストレッチ: 1日の終わりに固まった筋肉をほぐすことは、非常に効果的な予防策です。特にふくらはぎを重点的に伸ばしましょう。

体を温める習慣

  • 入浴: シャワーで済ませず、ぬるめのお湯(38~40℃)にゆっくり浸かりましょう。体を芯から温め、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。
  • 服装の工夫: 夏はエアコンの風が直接足に当たらないように寝る位置を調整したり、薄手の長ズボンを履いたりしましょう。冬は、レッグウォーマーや緩めの靴下を履いて寝るのがおすすめです。

即効性のある正しい対処法

予防していても、つってしまうことはあります。その時に慌てず冷静に対処する方法を知っておくことが重要です。

基本は「ゆっくり伸ばす」

筋肉が異常収縮しているのですから、その反対の動き、つまりゆっくりと筋肉を伸ばしてあげるのが最も効果的です。

  1. 慌てずにゆっくりと体勢を整える: 激痛でパニックになりがちですが、まずは深呼吸をして落ち着きましょう。
  2. 膝を伸ばし、つま先を手前に引く: 座った状態で、つっている方の足の膝をまっすぐ伸ばします。そして、足の指先を掴んで、ゆっくりと自分の体の方へ引き寄せます。これにより、ふくらはぎの筋肉が効果的にストレッチされます。つま先に手が届かない場合は、タオルを足裏に引っ掛けて引っ張るのでも構いません。
  3. 壁を使う: ベッドから降りられる場合は、壁に両手をついて立ち、つっている方の足を一歩後ろに下げて、アキレス腱を伸ばすストレッチの体勢をとります。
【重要ポイント】
  • 「ゆっくり」が鉄則です。急激に強く伸ばすと、筋繊維を傷つけ、肉離れを起こす危険性があります。
  • 痛みがおさまるまで、20~30秒ほどじっくりと伸ばし続けます

痛みがおさまった後のケア

  • 温める: 痙攣がおさまったら、蒸しタオルなどでふくらはぎを温め、血行を良くしてあげましょう。
  • 水分補給: コップ1杯のスポーツドリンクや経口補水液を飲んで、失われた水分とミネラルを補給します。
  • 漢方薬: こむら返りの特効薬として知られる漢方薬に「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」があります。筋肉の痙攣を和らげる作用があり、即効性が期待できます。頻繁に起こる方は、医師や薬剤師に相談の上、お守りとして常備しておくのも一つの手です。

分かりやすく解説した動画をご用意しましたので、ぜひご覧ください。

最後に

夜中のこむら返りは、水分・ミネラル不足、筋肉疲労、冷えなど、様々な要因が絡み合って起こる「体の悲鳴」です。日頃からバランスの取れた食事、適度な運動とストレッチ、体を冷やさない工夫を心がけることで、その頻度を大きく減らすことができます。万が一起きてしまった時も、慌てずにゆっくりと筋肉を伸ばせば痛みは和らぎます。

「たかがこむら返り」と軽視せず、以下の症状がある場合は、隠れた病気の可能性を考慮し、内科や整形外科を受診することをおすすめします。

  • こむら返りを非常に頻繁に繰り返す
  • 日中にも痙攣が起こる
  • しびれ、麻痺、むくみといった他の症状を伴う場合

シニア世代の夜間のこむら返りの多くは、脱水・ミネラル不足、筋肉疲労、冷え、加齢などが複合して起こる「体の悲鳴」です。日頃から水分・ミネラル補給、ストレッチ、保温を心がけ、生活習慣を整えることで予防と軽減が期待できます。

《 参考情報 》

こむら返り - 基礎知識(症状・原因・治療など)
【医師監修・作成】「こむら返り」ふくらはぎなどの筋肉が急につって、激痛が走ること|こむら返りの症状・原因・治療などについての基礎情報を掲載しています。
こむら返りの原因と対策について専門医が解説! - 整形外科専門医が解説!再生医療とカラダの痛み治療ブログ
コンテンツ 非表示 1 この記事でわかること 2 こむら返りとは? 3 こむら返りが起こる主な原因 3.1 水分・電解質(ミネラル)の不足 3.2 過度な筋肉疲労 3.3 血行の停滞・冷え 3.4 神経やホルモンの影
足がつる(こむら返り)原因と治し方|コムレケア|小林製薬
足がつる(こむら返り)原因は、就寝中や運動による水分不足、体の冷えによる筋肉の緊張、加齢による筋力の衰えと言われています。こむら返りはどんな時におきやすいのか、またその症状を防ぐ5つの予防策と対処法をご紹介します。

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